大リーグで活躍するイチロー選手が、あるところでこのような事を言っていました。“何年かプロでレギュラーをやっていると、野球が難しくなってくる。難しさだけが感覚として残っていく、それがメンタルを蝕むような、そのようなことを体験する。”
これは、熟練した術者が経験する憂鬱と、同じ感覚なのだと思います。傍から見たら、めちゃくちゃ野球が上手で、皆の憧れでも、本人はそれで良しとしていない。
結局のところ、究極の名人とは、中島敦の“名人伝”にでてくる弓の名手紀昌のように、最後には“至為は為す無く、至言は言を去り、至射は射ることなし”と言って、追求する技そのものを忘れてしまうのかもしれません。まだ、私はその境地には至っていませんが・・・。