水晶体(眼球内にあるレンズ)の混濁が原因で、かすみ、眩しさなどの症状が現れます。
分類としては、大きく先天性と後天性に分けられ、後天性の中には、続発白内障、外傷性白内障、糖尿病白内障などに分けられますが、その多くは加齢に伴う加齢白内障です。
水晶体は若い頃は、透明で 弾力性に富んでいますが、加齢に伴い、その透明性と弾力性は低下してしまいます。そのために、濁った水晶体で光が乱反射し眩しく見えたり、霞んで見えたりします。白内障は、その“障”という漢字が示すように、病気(白内“症”)ではなく、加齢に伴う水晶体の透明性の低下により、見え方に支障がでてきたら、病気として扱いましょうという意味合いが込められています。
症状をより深く理解するためには、白内障によっておこる水晶体の混濁の仕方を知る必要があります。
ヒトの一生における視力の推移をみると、18歳で最高となり、その後徐々に低下し、70歳を過ぎると急激に低下してくると言われています。
加齢白内障は、40歳代後半くらいから始まり、その程度は年々増悪していきます。特に70歳代では8割以上、80歳代では9割以上の罹患率です。ただ、この値は、白内障があり、視力低下してきて、生活に支障がでてきたという意味で、これら全ての方が、見えなくなったとか、手術をしたというわけではありません。
先に記したように、加齢白内障は年齢とともにその罹患率は増えていきます。一昔前の人間50年の時代と違い、皆さんが80歳を過ぎても健康でいられる現代においては、全ての人が罹る病気と言っても過言ではありません。
まずは、ある程度の年齢になったら眼科を受診し、眼の状態を把握し、ご自身のライフプランに合わせて治療してもらえるように、主治医にご相談すると良いと思います。
水晶体は、中心部に核、その周りに皮質が取り囲んでおり、水晶体嚢に包まれています。
その中の核が主に濁る(この場合は、“黄ばむ”ことが多いです。)のを核白内障、皮質が濁る(この場合は、“白濁する”ことが多いです。)のを皮質白内障といいます。
皮質白内障の場合は、白濁した部分で入射光が乱反射しやすいので、眩しいという訴えが一番強いです。特に水平方向から入ってくる光に弱いので、朝日や夕日、それに車のヘッドライトを眩しく感じます。女性の方などは、ベランダで洗濯物を干す際、眩しくてサングラスをかけるという方までいらっしゃいます。皮質白内障は、核白内障に比べ、かすみ感が強いので、早い段階で生活に支障をきたす事が多いです。
水晶体が黄ばんでいるのが分かります。
車軸状に白濁した部分が散在しています。
皮質白内障の場合、黄ばんだ水晶体越しに見ますから、かすんで見えるたり、暗いところで見えにくといった症状が主にでます。また、水晶体が黄ばむと同時に硬くなり、光を曲げる力が一時的に強くなるので、近くが見やすく感じたりすることがあります。
車軸状に白濁した部分が散在しています。
中心付近(青矢印)の濁りは軽度なので、このような目では視力は比較的良くでますが、患者様本人は、かすみ感やまぶしさを感じるようになります。
水晶体の上方(青矢印)の透明性は比較的保たれていますが、下方の濁り(橙矢印)は濃いため、日によって良く見えたり、見えなかったり変動が大きくなります。
核白内障の場合、ゆっくりと黄ばんでいくので、視力低下は比較的緩慢で、患者様もあまり不自由を感じないことがあります。
水晶体が黄ばんでいるのが分かります。
黄色を通り越して、茶褐色になりつつあります。(青矢印)
これは、行きつくところまでいった状態で、水晶体が真白になっています。ここまでくると、視力は明暗が判る程度ですが、このような状態でも手術すれば(1.0)まで改善させることが可能です。
白内障を患っている方は実際の景色とは違う見え方になります。下記が代表例となります。
実際の風景
核白内障の方
皮質白内障の方
核白内障 | 皮質白内障 | |
---|---|---|
水晶体の変化 | 水晶体核が黄ばみ、硬くなってくる。 | 水晶体皮質が白濁してくる。 |
主な症状 | ○暗いところで見にくい。 ○昔よりも近くが見えやすくなる。 ○ガスの炎など、青いものが見にくい。 |
○かすんで見える。 ○まぶしい。 ○車の運転や野外での活動時に見づらい。 |
その他特徴 | ゆっくり進行するので、比較的視力が低下してから眼科に受診することが多い。 | 視力の割に、患者様の訴えが強いことが多く、核白内障に比べ、早めに治療を開始することが多い。 |
疫学 | ○紫外線暴露との関連が指摘されている。 | ○紫外線暴露との関連が指摘されている ○高緯度住人ほど出現頻度が少ない。 |
白内障の症状に類似したもので、飛蚊症というものがあります。
その多くは、病気ではない生理的なものですが、中には、眼底出血や網膜剥離の前兆として起こる病的飛蚊症も含まれていますので、特に急にこの症状が現れたときには、眼科を受診し眼底検査をお受けになられた方が良いでしょう。
日本国内で使われている主な白内障点眼薬
眼の状態、年齢、家庭環境や仕事の有無など、複数の要素を考慮し、患者様と一緒になって時期を決めます。